2019年11月27日

罪の声(塩田武士)

これだけの大事件を未解決に終わらせてしまった警察が、一切の総括をしていないこともおかしいけど、スクープ合戦に明け暮れて、劇場型犯罪の舞台を提供したマスメディアも、当時の報道について何ら結論を出せてない (p237)
俺らの仕事は素因数分解みたいなもんや。何ぼしんどうても、正面にある不幸や悲しみから目を逸らさんと『なぜ』という想いで割り続けなあかん。素数になるまで割り続けるのは並大抵のことやないけど、諦めたらあかん。その素数こそ事件の本質であり、人間が求める真実や (p523)
 グリコ・森永事件を下敷きにしたサスペンス小説。事件そのものが、ほぼ史実通りに描かれノンフィクションと見紛う内容だが、ここに、この事件で使用された「子供の声」の主が絡むことで、事件取材とは畑違いの文化部記者が、昭和の未解決事件の「真実」を明らかにするという結末へと導いています。事件当時の記憶とも相俟って、興味深い読み応えでした。ところで、事件終結の契機の一つとなった滋賀県警本部長の焼身自殺に触れていないのは、マスメディア側の著者の立場からの悔恨の念によるものなのでしょうかね。
 第7回山田風太郎賞受賞作。

罪の声

罪の声

  • 作者:塩田 武士
  • 出版社:講談社
  • 発売日: 2019年05月15日


ラベル:塩田武士
posted by 千木良 at 23:00| Comment(0) | 読書記録|93日本文学小説・物語 | 更新情報をチェックする

2019年11月21日

蜂蜜と遠雷 上・下(恩田陸)

 明るい野山を群れ飛ぶ無数の蜜蜂は、世界を祝福する音符であると。
 そして、世界とは、いつもなんという至上の音楽に満たされていたことだろう、と。 (上・p14)
 やはりこの子は …―…
 音楽の神様に愛されてるんだ。 (下・p23)
 何かが上達する時というのは階段状だ。
 ゆるやかに坂を上るように上達する、というのは有り得ない。 (下・p154)
 音楽は本能だもの。鳥は世界に一羽だとしても、歌うでしょう。それと同じじゃない? (下・p272)
 国際ピアノコンクールを舞台に、4人のピアニストたちの成長を描く青春群像劇。天才が多すぎて、あって然るべきドロドロな葛藤が見えないこともあり、最後まですっきりと一気に読ませてくれる作品でした。
 第156回直木三十五賞、第14回本屋大賞受賞作。



ラベル:志儀保博 恩田陸
posted by 千木良 at 23:00| Comment(0) | 読書記録|93日本文学小説・物語 | 更新情報をチェックする