2017年06月04日

火花(又吉直樹)


新しい発想というのは刺激的な快感をもたらしてくれるけど、所詮は途上やねん。せやから面白いねんけど、成熟させずに捨てるなんて、ごっつもったいないで。新しく生まれる発想の快感だけ求めるのって、それは伸び始めた枝を途中でポキンと折る行為に等しいねん。だから、鬱陶しい年寄りの批評家が多い分野はほとんどが衰退する。確立するまで、待てばいいのにな。表現方法の一つとして、大木の太い一本の枝になるまで。 (p41)

「気づいているか、いないかだけで、人間はみんな漫才師である」 (p96)

人を傷つける行為ってな、一瞬は溜飲が下がんねん。でも、一瞬だけやねん。そこに安住している間は、自分の状況はいいように変化することはやん。他を落とすことによって、今の自分で安心するという、やり方やからな。その間、ずっと自分が成長する機会を失い続けてると思うねん。 (p113)

恐怖の対象は排除しなければならないから、それを世間は嘲笑の的にする。市場から逸脱した愚かさを笑うのだ。 (p124)

僕達は世間を完全に無視することは出来ないんです。世間を無視することは、人に優しくないことなんです。それは、ほとんど面白くないことと同義なんです (p165)

生きている限り、バッドエンドはない。僕達はまだ途中だ。これから続きをやるのだ。 (p171)

 お笑い芸人である著者のデビュー小説にして、第153回芥川賞受賞作。
 売れない芸人徳永が、天才肌の先輩芸人・神谷と出会い、師と仰いでから共に過ごし、別の道を歩むまでの10年の物語。第一線で活躍する著者によるリアル感は、主人公の徳永に著者をダブらせずにはいられない私小説感がありました。
 芥川賞受賞記念エッセイ「芥川龍之介への手紙」も収録



ラベル:又吉直樹
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