人間は自分がやられたことばかり訴えたがり、害を加えたほうであることには目をつぶりたがる。非のない被害者は『正しい』存在であり、その『正しさ』に対して誰にも何も侵害できない。 …―… そして、第三者がその『正しさ』に乗っかろうとする時、ひとは『正しさ』の魔力に取り込まれている。叩いてもいい物事に飛びつくのは、それに酔えるからだ。当事者の苦しみとは別のところで、だれにも文句がつけられない『正しさ』に乗っかって『絶対安全』なところから他人を非難しはじめる (p76)
神風が吹いたなどと言って喜んだとは、戦場からはほど遠い京や鎌倉の人間だった。血を流して戦った当事者ではなかと。それと全く同じ感覚が、戦時中の特攻の悲劇ば生んだ (p252)
今の人間にできるのは、遺されたものから推しはかることだけだ。 (p256)
若き天才発掘師・西原無量を主人公とするシリーズ7冊目は「元寇船の眠る海」の後編。萌絵、絶体絶命から始まる今巻は、エンディングまで怒涛の一気読み。一方で、水中発掘の専門的描写の少なさには飢えました。
ラベル:桑原水菜