2020年08月11日

まほろ駅前多田便利軒(三浦しをん)

「その人間の本質って、たいがい第一印象どおりのものでしょう。親しくなったら、そのぶん相手をよく知ることができる、というわけでもない。ひとは、言葉や態度でいくらでも自分を装う生き物だからね」 (p48)
「だれかに必要とされるってことは、だれかの希望になるってことだ」 (p105)
「いくら期待しても、おまえの親が、おまえの望む形で愛してくれることはないだろう」
 …―… 
「だけど、まだだれかを愛するチャンスはある。与えられなかったものを、今度はちゃんと望んだ形で、あまえは新しくだれかに与えることができるんだ。そのチャンスは残されてる」 (p163)
愛情というのは与えるものではなく、愛したいと感じる気持ちを、相手からもらうことをいうのだ (p196)
不幸だけど満足ってことはあっても、後悔しながら幸福だということはないと思う。 (p288)

 東京のはずれ「まほろ市」を舞台に。まほろ駅前で便利屋を営む多田と、そこに転がり込んだ同級生・行天の二人が関わる依頼にみえる様々な人間関係を軽やかに、でもテーマは重めかな。印象的な言葉がちりばめられた作品でした。映画は見てないが、瑛太さんと松田龍平さんで脳内再生されていました、テレコだったけど。第135回直木賞受賞作。


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2020年07月30日

ムカシ×ムカシ(森博嗣)

死ぬのは、本当に簡単なことなのだ。少なくとも生きることに比べたら、短い決意とほんのちょっとの勇気で実現する。 (p214)
 真実をすべて無にする以外に、元へ戻すことはできない。
 だから……。 (p253)

 Xシリーズ第4作。東京近郊に広大な土地を持つ旧家で起きる連続殺人。事件が起きても推理で解決しない、まさに森ミステリな一作です。ほかの作品とのブリッジ的な役割を感じるシリーズらしく、作中の椙田のセリフにWシリーズとの、エピローグでは、あの天才とのうっすらな繋がりも語られております。


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2020年07月23日

海の見える理髪店(荻原浩)

時計が刻む時間はひとつじゃない。この世にはいろいろな別々の時間があるってね。 (p203)
 (時のない時計)

 「海の見える理髪店」「いつか来た道」「遠くから来た手紙」「空は今日もスカイ」「時のない時計」「成人式」の6篇収録の短篇集。いずれの話も、人生に訪れる喪失、あの時に戻れたらという後悔、そして未来に踏み出すささやかな希望が描かれた家族の物語。ベテラン作家の安定性を感じた一冊でした。第155回直木賞受賞作。

海の見える理髪店

海の見える理髪店

  • 作者:荻原 浩
  • 出版社:集英社
  • 発売日: 2019年05月17日頃
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